Webこんぴら参り
「こんぴら参りって、神社のサイトじゃあるまいし、船のサイトでなぜ?」と言う声が聞こえて来そうだ。確かに船の
サイトでは船の写真が掲載されているのが一般的で、神社の写真を掲載しているサイトは他にはないかもしれな
い。しかし、こんぴらさん、すなわち香川県仲多度郡琴平町にある「金刀比羅宮」は、古くから舟人の信仰を集めて
きたところで、日本船はどんなに近代的な船でも、金刀比羅宮の御札と神棚をブリッジに備えていることからすれ
ば、「船」のサイトで取り上げていけないことはないはずだ。またテクノロジーの進歩した現代では、TITANICのよう
な海難事故は起き難くなってきたとはいえ、たとえば「SUN VISTA」の火災沈没事故や「フェリーむろと」の座礁、鳥
羽の市営船では接岸に失敗して岸壁に激突し、怪我人が出た事故などがあり、船旅といえども危険と隣り合わせ
であることは否定できない。
そこで船旅に出かける前に、まずはWebで「こんぴら参り」をしておこう、というのが、このページの趣旨だ。私が
1997年の元旦に訪れた時の様子を紹介したい。例によって写真が30枚ほどあるので、表示に時間がかかるけれ
ども、待つことにご利益がある(かもしれない)と思って辛抱していただきたい。なお、金刀比羅宮の公式Webサイト
は、このサイトでは、「海事関係団体」の1つとしてリンクしているので、関心を持たれた方はそちらの方も参照され
てはいかがだろうか。
* Kotohiraguu (konpira-san) is a shrine which is dedicated to the god of the sea. It is located in
Kotohira,Shikoku.
* Hatsumoude (First shrine visit of the New Year)
Japanese people visit shrines to pray for happiness for the new year.
琴平へ (To KOTOHIRA)
琴平へは岡山から「金刀比羅宮初詣列車」に乗って向かった。江戸時代は「こんぴら船」という船が大阪の淀屋
橋南詰、日本橋、島之内などから出ていて、丸亀、多度津の港と結んでいたという。往時を偲んで船で四国に渡る
コースも考えたものの、瀬戸大橋で四国に渡るのも悪くないと考え、このルートとなった。列車は超満員。瀬戸大橋
からは、観光船の「咸臨丸」の姿が見えた。
琴平に到着する。琴平はこんぴらさんで古くから開けた門前町。しかし現在ではこんぴら参りをする人は相変わ
らず多いものの、琴平に宿泊する人が少なくなってきていることが悩みらしい。確かに私も琴平ではなく、実は倉敷
に泊まっていた。
JR琴平駅前に立つと、こうした光景が目に入ることとなる。遠くに見える山が讃岐象頭山(標高521m)。この山の
中腹に金刀比羅宮がある。象頭山は、民謡「金比羅船々」でも歌われている。あまりに有名な民謡なので紹介する
のも気が引けるけれども、歌詞を紹介しておこう。
♪金比羅船々♪
金比羅船々
追手に帆かけて
シュラ シュ シュッ シュ
まわれば四国は 讃州那珂の郡
象頭山金毘羅大権現
一度廻れば
金比羅船々
追手に帆かけて
シュラ シュ シュッ シュ
なお、写真の左右に見えるのが、「こんぴら灯篭」。ここにつながる街道筋に全国から寄進されたという。このJR
駅前に置かれているものは、丸亀街道、多度津街道にあったものを1976年に移転したもの。
北神苑にある高燈籠。江戸時代、お伊勢参りとこんぴら参りは庶民にとって一生に一度の夢であり、講という組
織を作ってお金を出し合い、くじを引いて代参者が代表して参拝した。集まったお金で鳥居などを寄進したそうで、
この燈籠は、東讃萬歳講が寄進したもの。1860年に3千両で完成し高さ27.6mで、昔は瀬戸内海を航行する船の
目印でもあったらしい。
ところで初詣の際はJR琴平駅のトイレは大変な行列となる。しかしここのまえにあるトイレは、なぜか空いてい
る。いざというときに思い出して欲しい。
琴平の地理に明るい人ならば、この鞘橋は、JR琴平駅からはすこし離れていることをご存知だと思う。参拝した
後で訪れるのが良いのかもしれない。南神苑の金倉川にかかる反り橋で、唐破風の屋根がある。案内板の解説
によると、阿波麻植郡の講中の寄進によるものだという。
表参道 (OMOTESANDOU, the front aproach to a shrine)
表参道(もちろん渋谷の表参道ではない)を行くと、様々なお店がひしめいている。中でも「うどん屋」が目に付く。
通行人に声をかけている中央の店員は、男性には年齢に関係なく「おにいさん」と声をかけ、女性には「おねえさ
ん」と声をかけていた。確かにそう呼ばれると悪い気はしない。しかし、先ずは参拝を済ませよう。
旅館の敷島屋。他に備前屋、それから昭和天皇が宿泊されたというとらや(現在はそば屋)がある。私は日本で
旅行するなら、アメリカンスタイルのホテルよりは、こうした和風旅館の方が情緒があって面白いと思っている。仲
居(女中)さんと話をしていると旅が楽しくなる。
灸まん本舗石段や。琴平に来たら誰もがここの饅頭を買うのではないだろうか。お灸の形をした卵解きの饅頭
で、そう、「ひよ子」に似ている。
参道に面した写真館では家族写真の撮影中だった。昔の木下恵介監督のホームドラマのようなほのぼのとした
光景。
名物の石段駕籠。記念に担いでもらうのもいいが、かなり目立つことを覚悟しなければならない。ところで、駕籠
屋さんは国土交通省の認可事業なのだろうか。ふとそんな疑問がわいてきたが、しかしこうした事業まで役人に介
入されてはたまらない。
金刀比羅宮 (KOTOHIRAGUU)
さていよいよ石段が始まる。本宮まで785段ある。参道のお店屋さんは無料で杖を貸してくれる。しかし借りたも
のは返さなければならず、そのとき何も買わないで帰る人はあまりいないだろうから、結局商売繁盛となる。
遠くに見えるのは、大門(おおもん)。1649年の建立。高松藩主松平頼重の寄進による。
大門をくぐると、五人百姓と呼ばれる五軒の飴屋が「加美代飴」という飴を売っている。神域内で商いを許されて
いるのは、この五人百姓だけだ。
大きなプロペラが寄進されているのを見ると、ここの祭神が海の神であることを実感させられる。
神馬舎の白馬。人見知りするのか後ろを向かれている。実はこの後、もりもりと脱糞された。ありがたいものなの
だろうか。
石段のぼりはまだ続く。しかし、まだバテていない。横断幕には「こんぴらさまに ご家族の幸せを お祈りいたし
ましょう」とある。
すると右手に御書院が見えてくる。手前が表書院、奥が奥書院だ。表書院は江戸初期の建立で、国の重要文化
財に指定されている。丸山応挙の障壁画がみもの。他に学芸参考館、宝物館にも貴重な美術品がある。
ようやく本宮に到着、と言いたいところだが、これは旭社(あさひのやしろ)。あまりの立派さに本宮と間違ってしま
う。旭社は、1837年の建立。建築には40年の歳月を要したという。全国からの寄進による。
石段はまだまだ続く。この辺りまでくると少々草臥れてくる。あと少しだ。
本宮(The main shrine)
ここが本宮。念願の金刀比羅宮の本宮だ。早速参拝しよう。ところで皆さんは神社の参拝の作法をご存知だろう
か。ニ礼ニ拍手一拝というのがその作法だ。この方式は大体どこの神社でも通用する。具体的には、1.賽銭箱に
お金を投げ入れ、鈴をならす。2.ゆっくり二度拝礼する。3.二回拍手を打つ。パン、パン。4.再び一礼する。以上。
もっとも例外はあって、伊勢神宮は八度拝八拍手、出雲大社は四拍手だそうだ。
どうだろう、手を合わせたまま、「今年はいいことがありますように」などと長々と念じていた人はいないだろうか。
しかし、それは仏教の作法との混同だ。二礼二拍手一拝を実行してみると、実はあれこれ神様にお願いする間も
なく、参拝は終了してしまう。あっさりしているのが、Japanese-Style なのだろう。それに皆さんこうしていただくと、
初詣のあの混雑はかなり解消されるように思う。もっともここ金刀比羅宮は、かって金毘羅大権現と呼ばれ、神仏
混淆であったので、仏教の作法と混同しても神様には思いが通じるのかもしれないが…。
*The way to worship at a shrine
1.Throw coins into the saisenbako box and ring the bell.
2.Bow slowly twice.
3.Clap hands twice.
4.Bow again. That's all.
…などと書いているが、私はそれほど神道に詳しい訳ではない。しかし訳知り顔で解説をすると、こんぴらとはサ
ンスクリット語のクンビーラが訛ったもので、もともとインドのワニを意味する。つまりワニの神様が仏教の日本渡
来と共に仏の守護神となり、それが仏が化身して神になったという思想と結びついて海の神様、船の神様となった
ものらしい。祭神は金毘羅大権現であった。こうして解説している私も何だか訳が分からないが、この訳の分から
なさが東洋の思想なのだろう。
明治維新の際、神仏分離が図られ、祭神は大物主神と崇徳天皇とされた。大物主神と聞いて三輪山の大神(お
おみわ)神社を思い浮かべた人がいたとすれば(いるはずないか)、その人はかなりの神社マニアだと思う。
本宮前の高台からは讃岐富士(飯野山)が見え、爽快だ。ここまで上って来たことの達成感に酔いしれる。
第二幕 (The second act)
ところが本宮の脇に、こんな道標があるではないか。「おくのやしろ」とかいうのがこの先にあるらしい。折角ここ
まで来て、ここで帰るのは気持ちが悪い。そこで「おくのやしろ」まで行ってみることにした(よせばいいのに)。
途中、白峰神社というのがあった。しかし、「おくのやしろ」はここではないらしい。さらに山登りは続く。
山道はくねくねと続く。あそこを曲がれば終わりかと思えば、まだまだ階段が続く。私はシナイ山に登るモーゼの
心境であった。ハアハア息を弾ませて辺りを見まわすとあれだけいた参拝者が姿を消している。ここまでくる人は
相当に信仰心に厚いのか、物好きなのか、いずれかだろう。
ここが「おくのやしろ」こと奥社。厳魂神社という。何と本宮から583段、合計1368段の石段を登ってようやく辿り着
く。ここが本当の終着点だった。ここまでくると、これはやはり信仰心の現われかな、などと本気になりそうになるか
ら面白い。お守りを購入する。帰りはハイキング気分で象頭山の自然を楽しんだ。
絵馬堂 (EMADOU, the shrine of votive pictures)
これが金刀比羅宮グッズ一覧。手前の「大木札」は10,000円。恐らく日本船ならば、どんなに近代的なクルーズ客
船でも、この御守札は備えていることだろう。では日本郵船系のクリスタルシンフォニーやクリスタルハーモニーに
はあるのだろうか。どなたかご存知ならば教えていただきたい。
写真でははっきりしないが、ここの水引の結び方は独特のものとなっている。
ここは絵馬堂。金刀比羅宮には、二つの絵馬堂がある。写真中央に、オードリー・ヘップバーンの似顔絵と
SABRINAの文字が何とか見えると思うが、これは1999年11月まで東京と釧路を結んでいたサブリナの絵馬。
面白いのは、日本人初の宇宙飛行士、秋山さんの絵馬。確かに宇宙船も「船」という訳だ。宇宙旅行は究極の
クルーズと言うべきか。それにしても神様もテクノロジーの進歩に合わせていかなければならず、さぞお忙しいこと
だろう。
参拝を終えて (After visit)
讃岐うどん(Sanuki udon)
はっと気が着くと、朝から何も食べていなかった。そこで「うどん吉田家」に飛び込んだ。これが讃岐うどん。ちな
みに私一人で三杯食べたわけではないので、ご安心を。
* Sanuki udon
Noodles made from wheat dough. Served with hot soup and topped with a raw egg or a tempura.
一息ついてふと見上げると、こんな写真があるではないか。寅さんの扮装をした故渥美清さん。『男はつらいよ
寅次郎の縁談』(1993年)では琴島という架空の島を舞台にするが(ロケは志々島、高見島で行われた)、松坂慶
子さんと高松等でデートするシーンがあった。その撮影の際にこの店に立ち寄ったらしい。後で調べてみると、確か
に1993年11月9日に金刀比羅宮でロケが行われていた。
金刀比羅宮参拝のお土産はこんな感じのものとなる。有名なのは赤い「丸亀うちわ」。かさばるから買うのはよそ
うなんてことをすると後悔することになる。しゃもじも見えるがこれは宮島が本場だから、厳島神社に行ったときに
購入するのがよいだろう。
金丸座( Kabuki theater)
金刀比羅宮のふもとには、歌舞伎ファンならばたぶんご存知の金丸座(旧金毘羅大芝居)がある。これは日本最
古の芝居小屋であった旧金毘羅大芝居を移築復元したものだ。1985年から「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の上演
が始まり、全国から歌舞伎ファンが集まってくる。「奈落」や「すっぽん」の構造が手に取るように分かり興味深い
が、これ以上紹介すると、「神社かと思えば今度は歌舞伎かよ。」との声が聞こえてきそうなので、この辺でやめて
おくことにする。国の重要文化財。
* Kabuki
Kabuki is one of Japan's main traditional theater forms. It originated in the early Edo period, when a woman
called Okuni of Izumo Taisha performed a Buddhist dance in Kyoto.
むしろ船旅ファンならば、こちらの海の科学館の方が楽しいかもしれない。童心に帰ってラジコン船を操縦するの
も楽しいが、いい年をして熱中するのは、Mr.Beanみたいで迷惑だろう。
終わりに (The End)
これにてWebこんぴら参りも終了。航海の安全を祈願したら、後は旅に出るしかない。では皆さん楽しい船旅を!
Bon voyage !!
〔付録/Appendix〕
讃岐象頭山(安藤広重/Hiroshige Andou)
〔参考文献〕
西村望監修・井下正三著『こんぴら歌舞伎』(1996年、保育社カラーブックス)
伊達なつめ文・渡辺文雄写真『歌舞伎絢爛ハンドブック』(1992年、KKベストセラーズ ワニ文庫)
菅田正昭『日本の神社を知る事典』(1995年、日本文芸社)
深見東州『全国の開運神社案内』(1997年、たちばな出版)
〔関連リンク〕
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01/07/09