へすていあ


 フェリー・ターミナルで、「へすていあ」機関長とお会いした。これまで何度かEメールで遣り取りしていたためか、

不思議と初対面という気がしない。挨拶もそこそこに、早速「へすていあ」に案内していただく。

 「へすていあ」は1993年11月竣工。室蘭―大洗を結んでおり、船籍港は室蘭。同型の姉妹船は、「へるめす」「は

あきゆり」だが、いずれもギリシャのAnek Lines に売船され、現在、Sophocles V 、 Lefka Oriという船名で、アドリ

ア海でギリシャとイタリアを結んでいる(いずれも29,429 G/T)。

*2002年6月に室蘭―大洗航路は廃止になり、2002年現在、苫小牧―大洗航路に就航している。

船首ランプウェイ

 乗船は、船首舷側のランプウェイから。徒歩で乗船するときにランプウェイから乗船することは、全く無いとは言

えないし、ランプウェイから乗船された経験のある方は大勢いることと思うが、このクラスの大型フェリーの場合

は、普通ここから乗船することはないだろう。室蘭―直江津航路で乗船したことがある「へるめす」と同じだと思い

つつも、錆が目立っているなぁという印象。法定検査前という事情や、経費節減という事情もあるかも知れない。車

輛甲板から船内に入る。

エントランスホール

 客船お馴染みの「エントランスホール」。「へるめす」も確か同じだったように思う。ギリシャでも同じ状態で使って

いるのだろうか。

2等船室

 しかし、ギリシャではこうした2等船室はないらしい。こうした船室は日本船特有のものかもしれない。安く旅をする

のならば、2等も悪くはない。もちろん、「特等洋室」「1等和洋室」「2等寝台室」があり、「特等洋室」の設備は、クル

ーズ船の「スタンダード・ルーム」よりは遥かに良いと言えるだろう。

浴室

 もう一つ日本船特有の設備として、こうした大浴場がある。欧米人には珍しい設備だろう。彼らにどう説明しよう

かと、ちょっと考えてしまう。日本人にとっては、体を洗うところというよりは、リラックスするためのサウナのようなと

ころというべきだろうか。

脱衣所

 ところが、その「サウナ」もこの船にはある。写真は脱衣所。かなりゆったりしている。日本人はよっぽど風呂が好

きな国民なんだろうねぇ。本当にそう思う。

 こちらは「特等室」が並ぶ廊下。ここまではいつも目にしている区画だが、いよいよここから禁断の「立ち入り禁止

区画」に侵入となる(笑)。


ブリッジデッキ

船員食堂

 こちらは船員食堂。丸窓が船らしい。しかし写真を見て気がついたことだが、ハエ取り用のテープがぶら下がって

いた。懐かしい。客室内のハエ退治は、あるフェリー会社では停泊日に噴霧するなどして行っていると聞いたこと

がある。クルーズ船のロング・クルーズの場合はどうしているのだろう。ちょっと油断すると虫が出るそうだ。そうい

えば、商船三井客船が2002年まで運航していた「ふじ丸」では、ハエが飛んでいたっけ(笑)。

事務室

 事務室脇を通り抜け、操舵室に向かう。廊下の両脇は船員用の船室だが、ドアが無く、すべてカーテンで仕切ら

れていた。緊急事態に備えてのことだろう。ただ面白かったのは、ノートパソコンに向かっている人が多かったこと

だ。私を含め、世の中全体がパソコンにハマッているらしい。

操舵室

 操舵室に辿りつく。航海士ら数名がくつろいでいた。もちろん制服でピシッと決めていた、というのはウソ。皆さん

ラフな格好だった。船長に紹介され、お茶を入れていただく。人見知りの激しい内気な私は(本人はそのつもりなん

ですけど)、「恐縮です。」とか言いながら、(この際だ、何か質問しようかな)と思いつつも質問が浮かばず、船長は

ただニコニコしているだけという状況(笑)。

 窓から見える係船中の「れいんぼうらぶ」を見ながら、「それにしてももったいないですねぇ。」などと、私は残念が

っていた。一等航海士の方は、「余計なものがいっぱいついている船。良い船だけど。」という回答だった。確かに

直江津―博多航路に就航する船にしては立派に作り過ぎてしまったように思う。時代は豪華客船を求めてはいな

いのだろう。ヨーロッパでも、フェリーはクルーズ・フェリーから貨物主体の Ro-Pax 船に切り替わってきているし、

北米はこれまでの好景気を背景に、贅沢の限りを尽くしたクルーズ客船を就航させてきたものの、ITバブルが崩壊

して不況に突入した今世紀、そうした豪華客船は、早晩、維持することが難しくなるに違いない。「ニューれいんぼう

らぶ」のような、カジュアル・フェリーというのが、これからの船のあり方なのかもしれないが、とても残念なことだ。

 船橋の皆さんは、これから近くの神社に初詣に出かけるようだった。「チェンジャー(機関長)もどうです?」と誘わ

れていたが、私のために船に残っていただいた。恐縮だ。

神棚

 「神棚」も日本船特有のものだろう。もっとも最近では、北欧の船にも付いているものがあると聞いたことがある。

そう言えば2001年に就航した、世界最大級のクルーズ船、Adventure of the Seas (137,300 G/T)には、巨大な「鳥

居」のオブジェがある。北欧にも日本贔屓がいるようだ。「金刀比羅宮」のお札は、法定検査などで下関の造船所

に行ったときに調達するらしい。確かこれは1万円だったような。

レーダー

 こうした機器を見ると、頭が痛くなる人種と、弄繰り回したくなる人種がいる。皆さんはどちら。こうしてパソコンを

使っていらっしゃる皆さんですから、多分、後者ではないですか。

ジョイスティック・コントロール

 海事博物館などに、リモコン船を操縦できるコーナーがあるが、これは本物の船を操船できる装置。遊んではい

けません。

エンジン・テレグラフ

 よく映画などで、船長などが「全速前進!」などと命令を出すと、甲板員がハンドルをチリチリンと廻して機関室に

指令を出すシーンがあるが、それがこれだ。旧式の丸い形のものの方が、よく知られているかも知れない。

 では、これからそのチリチリンと指令を出した先の、機関室に行ってみることとしよう。


機関長

 その前に、本船の機関長のお部屋にお邪魔する。手前のコーナーにソファーとテーブル、奥にベッド、左側にテ

レビと冷蔵庫があり、これにバス・トイレがついていたら、もう「スィート・ルーム」という感じだ。実はウェブ・サイトを

お持ちで、私のサイトからもリンクさせていただいている。インターネットには、入港時にPHSを使って接続されてい

るとのことだ。お世話になりました。


機関室

機関操縦室

 先ほどの船橋のエンジン・テレグラフと同じものが、こちらにもあり、操舵室の指令が機関室にも伝わる仕組みに

なっている。空調が利いていて、快適だ。騒音もそれほどではない。

エンジン

 ところが、エンジンの近くに行くと、もの凄い熱気だ。室温は30度近くあるだろうか。真夏は4‐50度になるという。

なるほど機関室の見学を断るクルーズ船がある理由が、よく分かった。高齢者の多いクルーズ船で、真夏にここに

入れたら、倒れる乗客が続出しそうだ。それほど熱い。

 「じゃぁ、真夏はランニング・シャツ一枚ですか。」

と、エンジンの騒音の中、大声で聞いたが、怪我や火傷の虞があるので、肌は出さないとのことだった。

 機関室というと、油や埃で汚れているというイメージがあるかも知れないが、それとは全く正反対のところだ。もち

ろん船によっては汚い機関室もあるだろうが、「へすていあ」に関する限り清潔だった。

 船のエンジンは大きい。これ一つだけで自動車のエンジン一つ分位の大きさがある。中を覗かせてもらった。

 ピカピカに磨かれている。機関長のエンジンに対する愛情が伝わってくるようだった。その一方で私は、「吸入・圧

縮・爆発・排出だったっけ。」と自動車運転免許の学科教本の一節を思い浮かべていた。実はその程度の知識し

か持ち合わせていない(笑)。航海速力24ノット。

工具室

 子供の頃プラモデルを作り、ハンダ鏝を使ってラジオを組み立てたり、アマチュア無線の免許を取ったりしてきた

私は、こうしたところが大好きだ。今こうして写真を見ているだけでもワクワクする。何で文科系の学部なんかに行

っちゃったんだろうねぇ。

 このエンジンの奥にプロペラがついている。つまりこの写真の奥が船尾となる。では奥に行ってみよう。

シャフト(回転軸)

 ここまで来ると、ヒンヤリして、波の音が聞こえそうな感じがする。正に海に浮かぶ船であることを実感できるだろ

う。もちろん、言うまでもないことだが、船内からプロペラを見ることはできない(当然だ)。

 これは「舵」。でかい。これが動き出すと、どんな感じで動くのだろう。唸りながら動き出すのかな。

フィン・スタビライザー

 「フィン・スタビライザー」というよりは、その翼を動かす装置と言った方が正確だ。この船は全長192mもあるの

で、理屈の上からは、これにスタビライザーをつければ、揺れは殆ど無いということになる。いつもスタビライザーは

海中に出しているそうだ。もっとも私は揺れている船が好きな人種なのだけれども(変わっているかな?)。

発電機

 こちらは「発電機」。工場みたいだ。船のエンジンは止めることは殆どなく、したがって発電機も動かしっぱなし

で、照明も点けっぱなしが普通だ。

 「そんなに動かしていてエンジンは壊れませんか。」

 「壊れないですね。」

そんな会話をしていた。

バウ・スラスター

 エレベーターで、一旦車輛甲板に出て、船首に向かう。これは船首のスラスター。同様のものは船尾にも付いて

いた(スタン・スラスター)。これは横方向についているプロペラで、このおかげでこのような大型客船でも、曳船(タ

グ・ボート)の世話になることなく、出入港が可能となっている。

 車輛甲板から外に出て、今度は後ろの「ばるな」に向かうこととしよう。

PART 2 (ばるな)


へすていあ

Hestia

13,539 G/T (Japanese domestic grt)

Entered Service: November 1993

Builder: Mitsubishi Heavy Industries

Length: 192m

Beam: 27m

Draft: 6.70m

Pass. Capacity: 703


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02/06/19