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「船の雑誌」のページ

 船が好きな方ならば、柳原良平(やなぎはら・りょうへい)氏の名前は聞いたことがあるでしょう。そして柳原さんの独特な「船の絵」も ご覧になったことがあるはずです。
 このページでは、柳原さんが1970年代に編集されていた「船の雑誌」という、今では忘れられてしまった感のある雑誌を紹介します。
 もっとも、この雑誌が1970年(昭和45年)に創刊するに先立って「船の本」(1968年)という著書を出版されているので、まずは 「船の本」の紹介から始めようと思います。読まれたことがない方は、古書店で探してみてはいかがでしょうか。

柳原良平「船の本」(至誠堂、1968年、定価750円)

柳原良平「船の本」(至誠堂、1968年、定価750円)

柳原良平「船の本」(至誠堂、1968年、定価750円)

第I部 船キチガイの記
 第一章 そもそもの話
  その一 船キチガイ誕生
  その二 敗れた夢―造船技師
  その三 船トモダチ
  その四 船舶同好会顛末
  その五 わが財宝目録―船のエハガキ
 第二章 港望亭亭主言行録
  その一 港の見えるウチ
  その二 ボクの海洋水族館
  その三 私設艦隊建造記
  その四 ご存知ひいき筋
  その五 ヨコハマご案内
 第三章 海から海への旅ガモメ
  その一 ボクの船旅遍歴
  その二 ラーリン号航海記
  その三 船のりの女房のすすめ
  その四 ボクのユメの船
第II部 良平の船図鑑
 第一章 船の歴史6000年
  一 船のはじまり
  二 帆船時代
  三 世界大航海時代
  四 蒸気船時代
  五 現代の船
 第二章 船のいろいろ
  一 貨物船
  二 客船
  三 特殊船
 第三章 船のみどころ
  一 煙突
  二 救命ボート
  三 信号旗
  四 船の色
  五 船の名前
第III部 良平船旅案内
 第一章 船旅のすすめ
  一 船旅の楽しさ
  二 キャビン
 第二章 世界の航路
  一 日本からの船旅
  二 日本から乗れない船旅
  三 船キチガイ世界のみどころ
 第三章 日本の航路
  一 日本の船旅
あとがき

 本書は291頁の本で、写真はなく、全て柳原氏による独特の船のイラストが掲載されています。しかも箱入り。発行所、印刷所、製 本所と並んで、「製函所」というものが当時はあったようです。確かに以前は、箱に入った本が多かったものでした。因みに上の写真は、本で はなく、その「箱」の写真です。
 「船の雑誌」を紹介するに当たっては、まずはその前身とでも言うべき「船の本」を紹介しておく必要があると考えました。というのは、船 舶愛好家 としての柳原氏の原点が本書にあるように思われるからです。この「船の本」は、その後シリーズ化されました(全5巻)。
 また本書は、商船や旅客船の愛好家に多大な影響を与えた本の一冊でもありました。柳原氏のような視点で「船を語る」というのが、所謂 「船キチガイ」の世界では流行ったようでもあるからです。文体を真似た人も、多かったのではないでしょうか。
 今日、この「キチガイ」という言葉は、精神障害者差別につながりかねず、適切ではないとされています。しかし当時は、「カー キチ族」や「野球キチガイ」のように、愛好家を「キチガイ」と呼ぶ言葉の使い方は、ごく普通のことでした。この辺りは、英語圏でも同様で す。とは言え、今日の感覚ではアブナイ表現をしている部分も、なくはないです(苦笑)。
 なお最終章は、1968年当時の日本のフェリーの概観にはなっているものの、本書はあくまでも肩の凝らない読み物に徹していて、残念な がら「記録」「資料」としては不十分なものです。当時の凡その雰囲気を知ることができるだけになります。

柳原良平編集「船の雑誌1 特集・日本商船隊100年史」(海洋協会・至誠堂、1970年、定価850円)

柳原良平編集「船の雑誌1 特集・日本商船隊100年史」(海洋協会・至誠堂、1970年、定価850円)

柳原良平編集「船の雑誌1 特集・日本商船隊100年史」(海洋協会・至誠堂、1970年、定価850円)

カラーページ
・常陸丸(山高五郎)
・天洋丸(山高五郎)
・日本丸(田辺穣)
・富士丸沈没(大久保一郎)
・高千穂丸沈没(大久保一郎)
・新巡航見本市船(柳原良平)
幻の女王・橿原丸(黒川正典)
華麗なる客船・あるぜんちな丸(岡田正三)
黎明期の日本商船隊(上野喜一郎)
電信丸のこと(山田廸生)
日の丸商船隊の航跡(明治末期~大正)(山高五郎)
昭和半世紀 日本の海運を語る!(有吉義弥・福田久雄)
浅間丸一代記(東久世昌枝)
回想のりおでじゃねろ丸(鈴木五郎)
有馬山丸の一生(松永秀夫)
明治丸と海の記念日(飯塚羚次)
特設艦船記(福井静夫)
戦標船の話(柳原千里)
わが国海運界の課題(郷古雄三)
思い出の船
・海英丸と私(高木淳)
・春風丸と私(日高孝次)
・高砂丸と私(陳舜臣)
・上海丸と私(岩永信吉)
メニューに見る日本商船美食史(茂川敏夫)
煙突さまざま(野間恒)
瀬戸内の女王たち(是則直道)
船の絵と私(大久保一郎)
潜水艦の型について(堀元美)
練習艦隊同行記(曽村保信)
海のグループ紹介
・日本海事史学会(石井謙治)
海の学校めぐり
・鳥羽商船高専訪問記(池田清)
・海図の見方(藤沢政夫)
柳原良平のページ
・名キャプテンとの一時間・川崎汽船・赤井武雄いんぐらんど丸船長(柳原良平)
・船会社紹介・ジャパンライン(柳原良平)
・港めぐり・サンフランシスコ(柳原良平)
・船旅案内・舞鶴=小樽航路「すずらん丸」(柳原良平)
・模型船の作り方「鎌倉丸」(柳原良平)
創刊ごあいさつ
編集後記

 「船の雑誌」の記念すべき創刊号。最近では見られなくなったビニール・カバーの装丁です。執筆者には、船の世界の当時の論客がずらり と並ぶ豪華版。末尾に海洋協会理事長(至誠堂社長) の 出光宏氏によ る「創刊ごあいさつ」が掲載されているので、少し紹介します。
 「本誌は「海と船の国民雑誌」を目指して創刊されたものである。したがって誌名も『海と船』にする積りでいたが、某社がすでにその名称 を登録していたため『船の雑誌』とせざるを得なかった。
 誌名は『船の雑誌』でも当初の考えに変わりはない。たまたま第1号は日本商船隊百年史特集ときまったので、文字どおり船の雑誌になった が、今後は船と並んで海に関する知識をわかりやすく解説し、また海にまつわる面白い話も大いに記事にしていきたいと考えている。」
 本号で注目されるのは、大阪商船の専属画家であった大久保一郎氏の「船の絵と私」と題するエッセーが掲載されていることです。昭和初期 から大阪商船の船舶の絵葉書やポスターを描いていた方で、とりわけ第二次世界大戦中の徴用船の最期の様子を描いた一連の絵で知られていま す。

柳原良平編集「船の雑誌2 特集・世界の保存艦船」(海洋協会・至誠堂、1971年、定価850円)

柳原良平編集「船の雑誌2 特集・世界の保存艦船」(海洋協会・至誠堂、1971年、定価850円)

柳原良平編集「船の雑誌2 特集・世界の保存艦船」(海洋協会・至誠堂、1971年、定価850円)

カラーページ
・ヴィクトリー
・フィギュアーヘッド
・ユーレカ
・波奈之丸
大いなる稚き船たち―北欧の保存艦船(開高健)
大英帝国の遺産―イギリスの保存艦船(是則直道)
地中海に眠る船―海に沈んだ歴史(桑原洋)
うらやましい保存と復元―アメリカの保存客船(柳原良平)
星条旗のもとに―アメリカの保存軍艦(藤川道夫)
対談千石船入門(南波松太郎・司馬遼太郎)
浜崎屋物語(池田清)
これぞ社長室!―日本郵船社長室と有吉会長(前社長)(阿川弘之)
わが社の宝物(1)九十九商会の天水桶(白仁満)
わが社の宝物(2)第一回実際報告(岡田正三)
わが社の宝物(3)当社の創立と豊福丸(熊谷清)
わが社の宝物(4)宮島丸の模型(宮田高治)
わが社の宝物(5)山百合丸のプレート(郷古雄三)
わが社の宝物(6)天洋丸のソファー(佐藤邦明)
三笠の見どころ(福井静夫)
海の教室氷川丸(高久虔一)
明治丸と商船学校(上坂太郎)
雲鷹丸のユウレイ(山口芳男)
巨人進徳丸(杉浦昭典)
こじまと学生たち(山口敏秀)
夢のヨット スカンジナビア(伊藤梛子)
わが社の宝物(7)川崎正蔵日記(梅田善司)
わが社の宝物(8)浦賀造船所のこと(土井正三)
わが社の宝物(9)玉野の三つの記念品(山口清)
神戸の海の博物館ー神戸商船大学海事資料館訪問記(陳舜臣)
江田島への旅(吉村昭)
呉というまち(瓜生卓造)
戊辰戦争の二つの遺品(山高五郎)
こんぴら船ふね(松木哲)
水軍の島をたずねて 大三島に鎮座まします大日本総鎮守大山祗神社 の宝物殿と海洋博物館(金指正三)
九州感傷旅行(出光宏)
わが社の宝物(10)ベッコウ製模型 常陸丸と最上(黒田真一)
わが社の宝物(11)呉工場第一号ドック(森迫勝美)
わが社の宝物(12)桜島工場大ドック(藤野宏)
雪風痛恨(高橋栄)
あの船この船落穂集
マストは残った―軍艦のマストをたずねて(西村慶明)
名艦長との1時間(曾村保信)
船旅案内 夏の旅は船で日本列島を一周しよう!(柳原良平)
海洋協会について
編集後記

 翌年の1971年の発行ですが、創刊号の発行から6ヵ月後の「船の雑誌」第2号です。「海と船の国民雑誌」を目指していたためか、読 み応えのある雑誌になっています。編集後記に「じっくりとすみずみまで読んでください。いい本だと喜んでいただける自信があります。」 (柳原良平 記)とあります。

柳原良平編集「船の雑誌3 特集・新しい海の王者 コンテナ船」(海洋協会・至誠堂、1972年、定価850円)

柳原良平編集「船の雑誌3 特集・新しい海の王者 コンテナ船」(海洋協会・至誠堂、1972年、定価850円)

柳原良平編集「船の雑誌3 特集・新しい海の王者 コンテナ船」(海洋協会・至誠堂、1972年、定価850円)

カラーページ
・進徳丸(元田茂)
・にっぽん丸(西村慶明)
・ハンブルグ(西村慶明)
・トヤマ(ユーロブリッジ)
あゝ堂々のコンテナ船隊―世界のコンテナ船写真集(柳原良平・西村 慶明)
世界のコンテナと荷札集
世界のコンテナ船要目表
世界のコンテナ船発達小史
座談会コンテナ船時代(黒川正典・岡田正三・柳原良平)
鞍馬丸試乗記(柳原良平)
素晴らしいわが子 東米丸の誕生(郷古雄三)
進水式紙上案内(出光宏)
船の模型を作ろう!コンテナ船「ジャパンアンブローズ」(柳原良 平)
地中海クルーズ記 メディタレニアン・ブルー(是則直道)
クィーンエリザベスの思い出(岩永信吉)
船のお食事(伊藤梛子)
船の名前あれこれ(山田廸生)
船の写真アプローチ(西村慶明)
開成丸の処女航海日誌(池田清)
陸奥帰る(金指正三)
潜水艦の効用と限界(曽村保信)
船会社紹介 東海汽船(柳原良平)
珍しい船・なつかしい船
編集後記

 「船の雑誌」の第3号。コンテナ船特集という、雑誌としては商業的な成功が危ぶまれる特集ですが、ご覧のようにコンテナ船以外の話題 も広く取り上げています。西村慶明氏の「船の写真アプローチ」は、船の写真の撮り方にまつわるものですが、こうした記事は珍しいです。白 飛 びを防ぐためにフィルターを使うとか、フェリーや遊覧船に乗船して高速航行している船の写真を撮るとか、夜の船の撮り方といった話を書か れています。もちろんフィルムの一眼レフ・カメラを前提にした話ですが、デジタル・カメラ全盛の今日でも、参考にできる点はあります。当 時は単焦点レンズを使っていたようなので、どれ位の長さの焦点距離のレンズを用意して撮影に臨むかは、ズーム・レンズ全盛の今日と比べ、 遥かに重要なことだったようです。もっとも、横浜港での撮影の話に終始しているのが、少し残念なところでした。

柳原良平編集「船の雑誌4 特集・日本の客船―遠洋航路の巻」(海洋協会・至誠堂、1973年、定価980円)

柳原良平編集「船の雑誌4 特集・日本の客船―遠洋航路の巻」(海洋協会・至誠堂、1973年、定価980円)

柳原良平編集「船の雑誌4 特集・日本の客船―遠洋航路の巻」(海洋協会・至誠堂、1973年、定価980円)

折込 日本郵船株式会社一萬噸型汽船縦断面図
客船構図1 天洋丸
客船構図2 秩父丸
客船構図3 あるぜんちな丸
「日本郵船株式会社一万噸型汽船縦断面図」の解説(黒川正典)
客船ノート―遠洋航路の巻(出光宏)
戦前の代表的遠洋客船と航路図
私は客船オフィサー(三田一也)
これが客船サービス(立花盛枝・三井義松・芹沢伝作・岡野一郎・直 井敏雄・柳原良平)
思い出の船 地洋丸・諏訪丸・秩父丸(山高五郎)
グラフで見る戦後の客船
わが夢 客船の夢(郷古雄三)
船旅は海風に吹かれて(石川滋彦)
颯爽!シーウーメン(布野美香・塩川万里子・糸川伸子・長尾千宣 子・柳原良平)
世界一周への誘い(松本宏)
幻の客船(高久虔一)
客船心得4か条(柳原良平)
マゼラン海峡の波を見た!(曽村保信)
編集後記

 初期の「船の雑誌」は、種々雑多な船に関する記事が未整理に掲載されているようなところがありましたが、第4号になると、完成度が高 くなってきました。柳原氏は、編集後記に次のように書いています。
 「いったい客船はこれから再び人気を得て栄えるのか、それとも合理的経営の波を受けてジリ貧になって滅びてしまうのか、船に関心のある 人にはいつも頭から離れない問題だと思う。ひとつこの重大関心事である客船について徹底的に考えてみようということで特集を組んだのが本 誌第4号である。」
 今や21世紀に入っていますが、1970年当時と基本的な問題状況が余り変わっていないことに、驚き呆れるかもしれません(苦笑)。
 本号で注目すべきは、オリエンタル・クィーン(東洋郵船)、トロピカル・レインボー(神原汽船)、新さくら丸(見本市巡航協会)、コー ラル・プリンセス(チャイナ・ナビゲーション)、オリエンタル・プレジデント(オリエンタル・オーバーシーズ・ライン)といった、現在で は忘れられてしまった当時のクルーズ船が紹介されている点でしょう。しかしこれらの船の大半は、1973年の石油危機とその後の不況の中 で、姿を消していくことになりました。なお高久虔一氏の「幻の客船」は、第二次世界大戦後の日本の客船建造を巡る政界・官界における論議 を窺い 知ることができて、興味深いものです。

柳原良平編集「船の雑誌5 特集・瀬戸内の船と港」(海洋協会・至誠堂、1974年、定価1200円)

柳原良平編集「船の雑誌5 特集・瀬戸内の船と港」(海洋協会・至誠堂、1974年、定価1200円)

柳原良平編集「船の雑誌5 特集・瀬戸内の船と港」(海洋協会・至誠堂、1974年、定価1200円)

折込 柳原良平の瀬戸内海航路案内(柳原良平)
アルバム 瀬戸内の船(西村慶明・柳原良平)
船旅は瀬戸内に始まり瀬戸内にもどる(柳原良平)
瀬戸内への誘い(仁田一也)
鞆の鯛あみ(福田久雄)
別府航路に志き丸(寺田昌平)
瀬戸内の船音昔がたり(亀井一雄)
思い出の瀬戸内海の客船たち(柳原良平)
ソ連高官と船を語る(郷古雄三)
DDHはるな初見参(曽村保信)
海軍兵学校ノ最期―乗艦実習編―(乾尚史)
鉄と蒸汽の物語り(出光宏)
編集後記

 「船の雑誌」第5号は瀬戸内海のフェリー特集になっています。初期の号と比較すると記事数は減少していますが、今となっては貴重な 1970 年代の瀬戸内海のフェリーの写真が(モノクロームではあるものの)充実しています。「世界の艦船」のような編集になりました。とは言え、ペー ジ総数は96ページに減少して、定価は1200円に急騰(因みに創刊号は144ページで850円)。インフレーションの時代で、「狂乱物 価」という言葉が流行語になっていた時代でした。

柳原良平編集「船の雑誌6 特集・沖縄の海と船」(海洋協会・至誠堂、1975年、定価980円)

柳原良平編集「船の雑誌6 特集・沖縄の海と船」(海洋協会・至誠堂、1975年、定価980円)

柳原良平編集「船の雑誌6 特集・沖縄の海と船」(海洋協会・至誠堂、1975年、定価980円)

カラーページ
・日本丸
・クイーンコーラル2
・だいやもんどおきなわ
・飛龍
アルバム 沖縄の船
今は昔 思い出の沖縄航路(宮崎光雄)
沖縄への旅は船で!(柳原良平)
琉球の歴史と船(喜舎場一隆)
沖縄の見所(川平朝申)
対談 日本の文化 沖縄の文化(池田清・司馬遼太郎)
沖縄の空はいま…守礼の島にみるヒコーキ飛行機(おおば比呂司)
沖縄の海上自衛隊基地めぐり(曽村保信)
サンゴの海と島(中村庸夫)
黒潮を見ざるの記(出光宏)
編集後記

 「船の雑誌」第6号。ページ数は100ページなのに、定価は980円に戻りました。この点については、編集後記には何も書いていませ ん。前号と同様、フェリーの写真が充実しています。この辺りは「世界の艦船」風です。「世界の艦船」でも、1973年6月号 (No. 190)で沖縄が特集されていましたが、本誌でも、沖縄返還とそれに引き続く沖縄海洋博覧会に因んで、沖縄を取り上げたようで す。しかし本誌は「海と船の国民雑誌」を標榜していたことから、単なる船の話には留まらず、沖縄の文化も論じています。この頃が、日本本土で の最初の沖縄ブームではなかったかと思います。しかし沖縄海洋博覧会は明らかな失敗に終わり、「沖縄への旅は船で」というわけには行かな かったのでした。

柳原良平編集「船の雑誌7 特集・長崎の海と船」(海洋協会・至誠堂、1978年、定価1700円)

柳原良平編集「船の雑誌7 特集・長崎の海と船」(海洋協会・至誠堂、1978年、定価1700円)

柳原良平編集「船の雑誌7 特集・長崎の海と船」(海洋協会・至誠堂、1978年、定価1700円)

カラーページ
・長崎港と長崎市街 等
・フェリー出島
アルバム 長崎の船(西口公章・柳原良平)
思い出の五島・天草航路
長崎の船旅(柳原良平)
長崎の船物語り(越中哲也)
長崎造船伝習(出光宏)
佐世保という町(曽村保信)
イラスト 長崎の見どころ
長崎港風景40年(一ノ瀬義昭)
海に生き、その未来を海にかける長崎(渡辺信夫)
編集後記

 第6号から3年後の1978年に発行された第7号です。ページ数は128ページ。華やかさはないものの、「長崎の海と船」について真 面目に纏めた図鑑の趣。執筆者が長崎の市立博物館長や県庁職員であることから、地元の人でないと書けないような読み応えのある記事が特徴 的です(本号のみ広告が掲載されていないのも特徴的)。柳原氏の「長崎の船旅」の冒頭部分に、実は本号を「連絡船特集」とする案もあり、 全国の近海航路の客船(フェリー)をとり上げる狙いだったとい う趣旨のことが書かれています。もしこれが実現していたら、宝物のような特集号になったでしょうが、残念ながら「船の雑誌」は、本号を最 後に終わってしまいました。編集後記に「これからも思いの丈を全身全霊をもって注ぎ込んでいきたい」とあるので、本号で終わりにするつも りはなかったようです。恐らくは定価を1700円に値上げしたこと等から売れなかったために、 本号が結果的には最終号になってしまったのでしょう。

Information

 この種の雑誌は、古書店で全巻を「纏めていくら」で売られていることが多く、そうしたものを利用できれば、安く入手できると思いま す。ビニール・カバーの装丁なので、ビニールが経年変化により退縮したり、破れたりしていることも多いかと思われます。

柳原良平「柳原良平の仕事」(玄光社、2015年、定価2000円)

柳原良平「柳原良平の仕事」(玄光社、2015年、定価2000円)

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