PART 2


出港(LEAVING PORT)

鰺ヶ沢七里長浜港(PORT OF AJIGASAWA)

 いろいろあったが出港の時間となった。商船三井客船(MOPAS)の場合、出港前に見学者を船に入れ、その見学

者に見送らせることで「5色のテープ」が舞う華やかな出港風景を演出している。これはいい。ワンナイトクルーズな

ので照れてしまうが、南米移住船時代の伝統を今に伝えるものといえるだろう。

 出港風景に欠かせないものとしては、「銅鑼」がある。私はうっかりして望遠レンズを持ち出すのを忘れてしまい、

こんな写真になってしまった。そして「汽笛」と共に出港となるのだが、現実には出港が10分ほど遅れてしまい、ちょ

っと白けてしまった(想像だが見学者が時間になっても下船しなかったのかも知れない)。その、間延びした10分程

の間、私は甲板をうろうろしていて何か物足りないものを感じていた。お分かりになる方はクルーズ船に乗船され

た経験がある方だろう。そう、「シャンペンのサービス」と「生バンドの演奏」だ。これがない。経費節減という訳だろ

うか。「ボンボヤージュ・サービス」はどうしたのだ。こうなると是が非でも「シャンペン」を飲みたくなる。この船に酒

はないのか!!

 とか何とかしている内に、船は岸壁を離れ始めた。方向転換をしているところだが、前方に広がる津軽半島の西

海岸には家は殆ど見当たらない。高い木も生えていないようだから、冬は風が強く吹きつけるところなのかも知れ

ない。スコットランドあたりの海岸のようでもある。鰺ヶ沢の町は写真の右側の方に広がっている。今日はお天気に

恵まれ、汗ばむ陽気だ。私は早速ショップで購入した「FUJI MARU」のロゴ入りのTシャツを着ていた。

 クルーズ船に乗船した場合、どうしてもサービス部門で働くスタッフだけに目が向けられがちだが、甲板部、機関

部、無線部といった「運航部」の人達がいなければ船は動かないものだ。今回のクルーズでは特に問題なく無事に

船旅を終えることができた。裏方の皆さんには直接接する機会はなかったが、感謝の気持ちは伝えたい。

 出港するとき、面白いもので大抵の人は始め船首の方に殺到する。しかし、その内艫の方に逃げてくる。船首は

風が強くなるからだ。だったら最初から船尾にいればいいのにね。

 港がだんだん離れていく。今日は天気がいいから、デッキランチが楽しめるだろう。これは楽しみだ。


デッキランチ(DECK LUNCH)

 スポーツデッキに行くとランチの準備が進められていた。今日は案外船客が多いようで、6階のスポーツデッキの

他、7階のサンデッキの一部にも席が用意されていた。最後部の右舷寄りに席を確保する。

 こういう時にバナナを選ぶ人はあまりいないだろう。私はメロンとドリアンを選択した。ただちょっと気になったの

が、食事の用意をしてくれるコックさん達が皆さん伏目がちであったことだ。存在感がないのだが、もっと楽しくした

らどうだろう。そうしたら食事も美味しくなるように思うのだが…。

 だんだん混み始め、やがて満席になった。私は右を見ればこうした光景、左を見れば海という位置で食事を始め

た。たまに強い風が吹いてくることがあるけれども、概ね穏やかで気持ちがいい。

 デッキランチのメニューを紹介すると、次のようなものが提供されていた。

 *ポテト・クリーム・スープ、ノルウェー・スモークサーモンの飾り盛り、シーフードの串フライ各種、ムール貝のガーリック・バター焼き、牛肉の

シャリアピン風味焼き、野菜のスープ煮、グリルド・チキンの盛り合わせ、点心、ビーフ・カレー、鰻丼、鉄火丼、香の物、椀子そば、ミックス・

サンドイッチ、パスタのサラダ、胡瓜の中華風サラダ、ふじ丸特製パン各種、白玉ぜんざい、フルーツ・コーナー、アイスクリーム・コーナー、コ

ーヒー、紅茶、日本茶、ウーロン茶、トロピカル・ジュース。

 私はシンフォレストのCD-ROM 『世界の船旅 夢の航跡』(1996年)で紹介されていた「いくら丼」を食べたかった

のが、なかったのであきらめた(高いから?)。あのCD-ROM では、苫小牧―東京間のクルーズが紹介されていた

が、参加者が少なく寒々としていた。今日は満席状態で天気がいいので最高だった。相席になったのは男性4人の

グループだったが、仕事仲間なのだろうか。何故かビーフ・カレーを食べている人もいた。

 味の方は別にコメントする程のものではない。丼物は盛りが少なめだが、少なめにして色々な料理を楽しめるよ

うにしていたのはマルだ。ただ写真には写っていないが、「鰻丼」のたれが濃厚なのが少し気になった(醤油も砂糖

もきつい感じ)。

 気がついたら陸地は見えない。実は晴れているところを捜して秋田沖に南下しているようだった。このクルーズに

は青森県内の旅行業者が募集した団体客が乗っているようで、添乗員らしい女性がテーブルを廻っては、「いかが

ですか?」と聞いていた。この女性は明るく感じがいい。「ふじ丸」がこの女性のようなクルーで溢れていたらどんな

に楽しい船になるだろうかと思った。隣のテーブルの一人で参加されたらしい年配のご婦人は、「船で食事をする

のは初めてで、ありがとうございました。」と答えていた。素朴な答えだが、船で食事をするのが初めてではない私

も、そうした質問をされたら同じような回答をしたことと思う。こうしたことを味わうために、この船に乗船したのだか

ら。不愉快なこともあったが、これで許してやろうかという気持ちにもなっていた。


オリエンテーション(ORIENTATION)

 昼食後、13時30分から2階パシフィックホールで、「オリエンテーション」が始まった。この後「ビンゴゲーム」となる

のだが、この「オリエンテーション」には出席しておくことにした。お客さんの大半は何か面白い話をして笑わせてく

れるかと期待しているようで、大して可笑しくもない冗談にも過剰に反応する。ところがこのパーサー、船がタイタニ

ック号のように沈没する場合を想定した救命胴衣の着用方法の説明に終始し、それで終ってしまった。つまり海に

飛び込む時は体温を保持するため長袖を着て袖口を縛れとか、救命胴衣の紐をしっかり縛らないと海に飛び込ん

だとき体が抜けて溺れてしまうとか…。

 確かにこうしたことは大切なことであるが、船室のテレビでも繰り返し放送していたことでもあり、ただでさえ時間

が足りないワンナイトクルーズで、わざわざ30分も掛けて説明することだろうか。外国の港での四方山話とか、とっ

ておきの話題はないのだろうか。さらにこのパーサーは「オリエンテーション」の終りに、こんな引っかかる言葉を残

してホールから退場されたのだった。

 「これからビンゴゲームとなりますが、今日はプロの司会者の方が乗船されています。どんなビンゴゲームになる

かは分かりませんが、多分、船のビンゴゲームと同じでしょう。みなさんビンゴゲームのやり方は分かっています

ね。じゃー、説明はしません。少しお待ちください。」

 聞き流してもいいのだが、何か気分が悪かった。へそ曲がりの私が解読すると、「今日はよそ者がビンゴゲーム

の司会をするので、少し心配なのです。本当はやらせたくないのだが。」というように聞こえた。私はビンゴゲームを

パスしたのだが、その後始まったビンゴゲームでは、司会の方が数字の書いた玉の出てくる機械の使い方が分か

らず、ゲームを中断して船側に聞いていたそうだ。単なる連絡ミスなのか、意地悪なのか…。


甲板にて(ON DECK)

 ビンゴゲームは大体見当がつくので、船旅気分を味わうべく私は甲板に出た。私は甲板でぶらぶらしているのが

好きだからだ。幸い他の船客は「イベント」に忙しいのか、甲板には誰もいない。これはラッキーだ。

 例によってこうした銘板を見つけ、カメラに収める。ふじ丸は、1989年、三菱重工業神戸造船所で建造された。総

トン数23,340トン。日本で初めて建造されたクルーズ船だ。

 今回はブリッジ見学はなし。確かどこかに「弊社の船では船橋は入出港時や夜間以外航海中は原則として自由

に入ることができます。」とあったような気がするが、体よく断られてしまった。原則には例外が付き物だからね。そ

こで、こんな感じで見学する。

 冒頭で触れた富士山の外板だが、切断面はこんな感じだ。知らない人はまず気がつかないだろう。まぁ、こうした

写真を撮る人はマニアな人だけなのでしょうが…。

 そうして歩き回っていて、いい場所を見つけた。4階のプロムナードデッキの船尾にこうした隠れ家的な空間があ

る。ここは「ふじ丸」で私のお気に入りの場所の一つにしておこう。

 誰にも邪魔されない。1時間ばかりこんな感じでいた。クルーズ雑誌ならば、ここで「太陽が違う。空気が違う。し

かし海は続いている。」だの、「こころを癒す旅へ。」だのといった文句が並ぶところだ。そうした気持になりたかった

が、しかしなれなかった。はっきりと何かは分からないのだが、この船は何か気に障るのだ。つまらない。しかし折

角乗船したのに悪口は言いたくない。そこで何とか誉められないものかと、あれこれ考えていた。

 地味なサービスというのは実は、「何もしないでただ船に乗っているのが好き」という本当の船旅好きの為のサー

ビスなのかも知れない。私がもしこの会社から依頼されて、雑誌の提灯記事を書くことになったならば、そんなこと

を書いて原稿料をせしめることだろう。しかし、それならば長距離フェリーに乗ればいいではないか。この船よりず

っと感じのいいフェリーは他にたくさんある。サービスがないのならば、それはクルーズ船ではないのではないか。

 そう思った時、一匹のハエが私の腕にとまった。サービスのつもりらしい。追い払うと別のハエが飛んできた。ク

ルーズ船は食べ物が良いためか、丸々と太っている。以後、追い払うととまり、追い払うとまたとまるという動作を5

分に一度繰り返さなければならなくなった。遂に私は席を立った。


アフタヌーンティー(AFTERNOON TEA)

 15時からラウンジ「エメラルド」で、お茶のサービスがあった。メニューには、「ちんすこう、スパイス・ティーまたは

コーヒー」とあった。なぜ沖縄の「ちんすこう」が登場したのかわからない。どうせならばこの船のオリジナルグッズで

ある「NATURAL COOKIES」か「CORNET COOKIE」にでもすればいいのに、と思った。

 因みにオリジナルグッズのクッキーは、(株)中島大祥堂というところの製造で、特にうまいという程のものではな

い。しかし包装のデザインはとても趣味がいい。優れている。だから、包装の缶や紙箱目当てに入手することを私

はお奨めする。

 16時からは3階ベランダで、「カジノ教室」のようだった。しかし17時からカクテルパーティーが始まるので、着替え

るため船室に戻って少し休むことにした。はっきり言って私は心身ともに少し草臥れていた。

 

 チラシには、「潮風に吹かれながらデッキランチを楽しみ、カジノやゲームで時間を忘れ、フルコースディナーを深

く味わう。」とあった。ではどのようなディナーが待ちうけていたのでしょう。見てみたい方はどうぞクリックしてくださ

い(あぁ)。

PART 3


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00/09/29