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シンポジウム 海から開く北海道・クルーズ振興に向けて ~北海道におけるクルーズ観光の魅力~

とき:2003年1月20日
ところ:小樽港・新日本海フェリーターミナル3階ホール
主催:北海道運輸局、北海道開発局、水産庁
後援:新日本海フェリー(株)、(社)日本外航客船協会
事務局:(財)日本交通公社

1、主催者挨拶(北海道運輸局次長 木澤隆史)

 クルーズ振興のシンポは昨年3月1日に引き続いて行われるもの。小樽ではクルーズ船に対する市民の関心が低いので、運輸局の職員でク ルーズ船入港時に「見送り隊」を結成して見送り行事を行っている。

2、基調講演(大阪府立大大学院教授 池田良穂)

「北海道振興の新たな戦略・クルーズ振興」

 日本人の殆どがクルーズとは豪華客船の旅という間違ったイメージを持っているが、北米では年収300万円くらいからをターゲットにす る 「現代クルーズ」が成功している。クルーズ客船は大型化し、新造船の建造が相次いでいる。

 クルーズの歴史を振り返ると、定期客船の時代からクルーズ客船へと推移し、カリブ海でNorwegian Caribbean Lines、Royal Caribbean Cruise Line、Carnival Cruise Linesが1960年代後半から切磋琢磨し合い、成長した。航空機を用いてマイアミに集客し、定曜日に出港することを特徴とする。「現代クルーズ」はかっての豪華客船の 旅とは対極をなし、一般大衆のための気軽なレジャーとなっている。

 日本のクルーズ産業は独特であり、商船三井客船のチャーター・クルーズから始まり、合計9隻投入されたが、現在4隻にまで減少し、他 は失敗している。

 北海道クルーズの可能性としてアラスカで実施されている定期クルーズをモデルとすべきである。北海道クルーズには様々な優位性がある が、 クルーズの寄港地からクルーズの起点港に脱皮しなければならない。

 旅客フェリーの活性化のためには北欧のクルーズフェリーをモデルとすべきである。最近ではグリーン・フェリーと呼ばれる環境に優しい フェ リーも登場している。

3、基調講演(財日本交通公社主任研究員 黒須宏志)

「北海道におけるクルーズ振興の現状と今後の可能性」

 飛鳥が7月~9月の3分の1を北海道でクルーズをしている。船客は高齢者で財政的にゆとりのある者が多く、平均消費額は他の旅行者に 比べ 高い。寄港地よりも船で選ぶ人が多い。

 パイロット・プロジェクトの提案として、第1段階においてはこれまでの流れと逆に、「観光関係者から港湾管理者、そして船会社という 流 れ」を作ってはどうか。北海道らしさを生かしたテーマ、クルーズを企画すべき。第2段階として、「アジア版アラスカ・クルーズ」を目指し てはどうか。

4、地域における取組報告

沓形港(北海道開発局 須藤) 2002年9月 25日に利尻島でクルーズ・シンポが開催され、クルーズを活用した地元全体の地域活性化が提言された。

函館港(水産庁 大橋) 2002年11月21日 に函館で「港造りは街造り」というテーマでシンポが開催された。

5、パネルディスカッション

コーディネータ(海事プレス常務取締役 若勢敏美)

 「海事プレス」は「怪獣プレス」と間違われたことがあるというギャグで会場をわかせた後、「なぜクルーズ振興を図らねばならないの か」と問題提起。

池田 米国では現代クルーズが成功し、ヨーロッ パ、東南アジアでも急速に伸びている。日本ではクルーズの料金が高いが、これは市場が十分に成長していないために富裕層をターゲットにせ ざるを得ないからである。価格を引き下げるためには市場を広げる必要がある。

(社)日本旅行業協会北海道支部長 実光進 旅行 会社は道外客の誘致に成功しているが、人数は増えても消費額は伸びていない。道内客は不況の影響で大きく落ちこんでおり、解決策は分らな い。クルーズは今後の収益源として期待され大変魅力的だが、主力の商品になっていない。

北海道運輸局企画振興部長 東井芳隆 観光振興と 海事振興を図るためにクルーズ振興を図る必要がある。現在、観光市場が高齢化しており、観光を北海道のリーディング産業にするためにはク ルーズの振興を図るべきだ。

新日本海フェリー専務取締役 入谷一成 クルーズ 市場はばら色の可能性を持っていると認識している。料金が高い理由は、外国人労働者を使ってはいるが、米国でチップに相当する部分も日本 では船社もちであり、また日本では食事も和食・洋食・中華と用意しなければならず、コストがかかるからだ。日本では一握りの高齢のお金の ある人が船客の8割を占めている。スタークルーズの失敗の原因は、船賃と同額の船内消費をさせようとしていたものの、日本人はカジノ・飲 食等で消費してくれなかった点にある。商品力があることは証明されている。問題はいかに振興するかだ。

*「定期クルーズを始めると、船で選ぶ人はどうなるのか」

池田 船が固定ファンを持つのは当然。日本の市場 の問題は、高級船しかない点にある。また港湾当局の役割も重要だ。

*「定期クルーズをするとして、1週間のクルーズを20本売るこ とは可能か」

実光 母数を増やすには時間がかかる。道内客の母 数は小さい。道外客は航空運賃が安いので面白ければ売れるだろう。海外客は千歳のゲートウェーとしての役割が小さく、単価を10万円以下 にするのは難しいのではないか。

入谷 13万円クルーズは、海外の便宜置籍船を使 えば不可能ではないが、欧米型のクルーズと日本型のクルーズを区別すべきではないか。欧米のクルーズ船はもはや「船」ではなく、「エン ターテインメント・パークが海にあるようなもの」だ。交通・娯楽・宿泊が1つになったものだ。

*「北海道の港湾はバラバラではないか」

東井 北海道の観光地は他力本願ではないか。ク ルーズ船が来てくれるのではないかというところで留まっている。

池田 北海道は寄港地から起点港にしなければなら ない。

*「港の管理者の方からのご意見は」

室蘭市港湾局(渡辺) 客船誘致に力を入れている が、観光関係者の連携が必要と感じ始めている。

留萌市港湾局(塚本) ふじ丸、飛鳥を使ったイベ ントを行っている。船内見学に2000人が訪れた。運賃は市が負担、参加者には飲食代のみを負担してもらうクルーズを行った。

*「最後に一言ずつどうぞ」

池田 情熱のあるキーマンが各港に必要だ。

入谷 現在クルーズ船客はリピーターが多く、マン ネリになり商品企画に困っている。力を貸して欲しい。

実光 成功しているクルーズの旅行専門会社が生ま れてきている。クルーズは売るのが難しい。販売員を育てる必要がある。客船会社とも連携を図る必要がある。

東井 連携を図っていくべきだ。

Information

 北海道で定期クルーズが実施されるようになって久しいですが、2003年1月には、このようなシンポジウムが開催されていました。私 のメモを基にしたものですが、記録として掲載することにしました。