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クルーズ船の評価基準

ダグラス・ワード

どのようにして船を評価しているか

 私は1980年以来、クルーズ客船の評価と格付けを行い、職業としている。加えて、少数の訓練された「プロの乗船客」のチームからも 定期的な報告を受けている。格付けは今日の外航クルーズ客船のすべてについて、国際的に通用する予め定められた基準と点数によって、全く 客観的に行われているものだ。

 本当に「世界一のクルーズ・ライン」とか「最高のクルーズ客船」というのはなく、貴方にピッタリの船とクルーズが最高の船であり、ク ルーズだ。それゆえ、違った基準が世界中の違った大きさ、スタイル、市場の船に当てはまることになる。装飾の異なる似通ったサイズの非常 に多くの新造船があるので、ダイニングでの体験の水準やクルーズでのサービスやもてなしに、より力点が置かれることになる。

 この章には、本書が書かれたときに就航していた256隻の外航クルーズ客船を収録している。最も新しい船を除いた殆ど全ての船は、私 のクルーズの体験やチームからの報告に基づき、400以上のチェック・ポイントにより、慎重に評価されたものだ。分かり易くするために、 最終的な点数は、まず20の項目に分け(それぞれの項目につき100点、総計2000点満点)、そして読者の便宜を考え、5つの大きな項 目に分けている。

 クルーズ・ライン、船主、及びオペレーターは、この格付けを株価のように注目すべきだ。格付けは競争の激化や、より顧客に好まれる設 備を備えた新造船の投入や他の市場や乗船客の要素によって、毎年下がりもすれば、上がりもする。

 格付けは、ハード・ウェアである船の設備よりは、ソフト・ウェアである乗客に提供されるクルーズの水準が、より反映される。であるか ら、船が最新のものでデザインや装飾が世界一であったとしても、食事やサービス、スタッフやもてなしが良いものでなければ、点数と格付け は、これらの側面をより明らかに反映したものになる。

 各ページの上部の船名の脇に添えられた星は、総合的な格付けを表している。最も高い評価はファイブ・スター(★★★★★)であり、最 も低い評価はワン・スターである。この方式は接客業において世界的に認知されているものだ。プラス(+)は、その船が星をもう一つ獲得す るには少し足りないことを示している。しかしながら、総合点よりは星の数の方が、多分、船を比較するのには有用であろうかと思う。

格付けの意味するところ

1851点―2000点 ★★★★★+

 最高の贅沢なクルーズ体験が期待できるだろう。実際、これ以上のものはないのだ。本当に心に残る、隅々にまで心配りのなされた、手際 の良い、個人的なサービスがなされるに違いない。装飾はエレガントで上品なもので、きらびやかではなく抑制の効いたものでなければなら ず、公室のレイアウトは風水の原則に合致したものだろう。このクラスの船は、クルーズ産業界で卓越した存在でなければならず、それに見 合ったサービスともてなしのある、とても特別なものでなければならない。とても高い水準の環境、快適さ、サービス・レベル、最高で新鮮な 食材で、全てのパンとロールパンは船上で焼かれたものでなければならない。高度に創造的なメニューとダイニングは選択の幅が広く、バラエ ティーに富んだものでなければならない。そして特別の注文はダイニングの作法の一つになっていることだろう。ダイニング・ルームの食事 (とりわけディナー)は、申し分のない、心に残る出来事で、最上の陶器で正しく給仕され、ワインの選択は適切で、正しい大きさのグラスで 給仕されることが求められる。サービス・スタッフは本当に個人的な、それでいて控えめで手際のいいサービスで貴方を喜ばせてくれるだろ う。そして「ノー」という言葉は彼らの辞書に絶対にあってはならない。これは、船上での洗練された型にはまらない生活の本当に最高の もので、そして貴方の銀行の預金通帳にかなりの損害を与えるかも知れないものでもあるのだ。

1701点―1850点 ★★★★★

 極めて心に残る本当にすばらしいクルーズの体験が期待できるだろう。そしてそれは手際の良い、支払った金額に見合った細かいところに まで配慮の行き届いたものだろう。サービスともてなしの水準は、とりわけもてなしの訓練において、すべてのオフィサーやスタッフの中で際 立って高いものだろう。食事とサービスは高い水準と釣り合ったものであり、そしてその高水準は配慮が行き届いているが控えめな、実際に可 能な最高のものなのだ。食事は十分な味で至極心に残るものでなければならない。特別の注文は決して問題が生じるようなものであってはなら ず、とても高い水準の創造的な料理でなければならない。ワインの選択は多彩なものでなければならず、それは正しい大きさのグラスで適切に 給仕されるべきものなのだ。エンターテインメントは申し分のない内容で、バラエティーに富んだものであることが求められる。また、このク ラスの船に乗船するスタッフの誰の辞書にも、「ノー」という言葉はあってはならない。この高いクラスの船によるクルーズは、貴方の銀行の 預金通帳に損害を与えるかも知れないが、とりわけ最も広いグレードの客室を選んだ場合はそうなることだろう。

1551点―1700点 ★★★★+

 上質のクルーズの体験が期待でき、それは至極心に残るものではあるが、全ての面で優れているというには少し足りないところがあるだろ う。個人的なサービスと細かなことへの心配りが、多分僅かに優れているに過ぎないだろうが、それにも関わらず、いいクルーズの体験が得ら れるだろう。つまり極めて清潔かつ快適で、滅多にない親切な個人的なサービス、エンターテインメントの水準の高いクルーズだ。料理とサー ビスはとても洗練されたもので、上質の陶器で提供される新鮮な食材とバラエティーに富んだメニューは、まず誰にも気に入れられることだろ う。要するに、これはよく洗練されたクルーズの体験が得られるもので、恐らく船は新造船か、殆ど新しいものであろう。

1401点―1550点 ★★★★

 とてもいい水準のクルーズの体験が期待でき、多分、モダンでとても快適な船が、いい設備とサービスを提供することだろう。食事は、明 らかに「グルメ」向きのものではなく、サービスは貴方が信じていたかも知れないパンフレットにある作り物の笑顔ではあるものの、概して極 めて上品だ。船上でのサービスは、時折少々ロボットのようで人間味に欠けることがあり、クルーズ・ラインが訓練しているプログラムだけが 良いものではあるが、よく組織化されていることだろう。しかしながら、いいひとときを過ごすことが出来、貴方の銀行の預金通帳に与える損 害はまぁ、月並みのものに違いない。

1251点―1400点 ★★★+

 上品なクルーズの体験が期待できるだろう。船のサービスのレベルは、良いものではあるが、しかし多分、より高級な環境で期待される手 際の良さに欠けることだろう。この点数の船に乗船するクルーは、点数を上げるためには、もてなしと乗客の必要とする世話を喜んでする点 で、積極的な態度をとる必要がある。細かなことへの心配りと柔軟性の点で、スタッフの訓練が多分必要であろう。ダイニング・ルームの食事 とサービスのレベルは適切ではあるが、特別の注文や通常と変わったことには、少し難しい点があるかも知れない。

1101点―1250点 ★★★

 月並みに上品な、中庸のクルーズの体験が期待できるだろう。船内設備の広さと質は、月並みのものだろう。船室は少し狭いものとなろ う。食事とサービスのレベルはまずまずのものだが、全てが規格化されていて、特別の注文に関しては少しばかり杓子定規なところがあるだろ う。クルーの態度は疑いも無く改善の余地があり、もてなしと清潔さのレベルは、穏当だがやや物足りなく、エンターテインメントは多分、貧 弱なものだろう。しかし、堅苦しくない自宅にいるような快適さを求める向きには、良い船で、預金通帳に損害を与えることは殆どないだろ う。

951点―1100点 ★★+

 宿泊設備、品質、食事、サービス、そしてもてなしのレベルの点で低い水準のクルーズが期待できるだろう。環境は全く気取りの無いもの だ。とりわけ、食事とそのサービスは、多分失望させるもので、むしろ道端の典型的なカフェの水準だろう。サービス、もてなしの水準の点で 柔軟性が殆どなく、スタッフの訓練は貧弱も同然と言うべきだろう。それゆえ総じてクルーズの体験は、支払った低料金に見合ったものとなる ことだろう。

801点―950点 ★★

 質素なクルーズが期待できるだろう。船は多分、メンテナンスとサービスのレベルの点でより注意を払う必要があり、もてなしについては 言うまでもない。食事は本当にまずく、均一化されたもので、質は低く、サービスはせいぜい可もなく不可もなくといった望まれる態度からは 遠く離れたものとなろう。スタッフの訓練は僅かなもので、人の入れ替わりは頻繁だろう。「埠頭の外れでなされているような」エンターテイ ンメントを見るよりは、良い本でも読んでいたい気分になることだろう。

651点―800点 ★+

 殆ど初歩的なクルーズの体験が期待できるだろう。細かなことへの心配りは殆どなく、多分、低賃金で雇われた満足な訓練を受けていない スタッフからは、貴方は物のように扱われるだろう。船は多くの場合、かなりの修繕とグレード・アップが多分必要で、設備は殆どないだろ う。清潔さと衛生状態はかなり怪しいもので、個人的なサービスの手際良さは全くなく、クルーの態度は酷く、見るに耐えないエンターテイン メントがなされ、それは低い点数と評価の重要な要素となることだろう。他方、クルーズの料金は、おそらくとても安価なものだ。

601点―650点 ★

 もてなしの殆どない酒樽の底のようなクルーズの体験が期待できるだろう。細かなことへの心配りなぞ忘れることができる。これは最も基 本的なモーテルにいるのと同じような種類の経験だろう。設備は殆どなく、多くの人がもてなしがないことに耐えることとなる殆ど訓練を受け ていない気の利かないスタッフ、船は修繕とグレード・アップが必要だろう。このクラスのクルーズ客船のクルーズは費用が安いため、全く品 質のないものとなる。このことはとりわけ食事、サービス、エンターテインメントの分野に現れる。別の言葉で言えば、これは全く忘れても構 わないようなクルーズの体験となり得るのだ。

 格付けと評価は次の5つの分野に渡る。以下、重要な点について述べる。

 (1)船 (2)宿泊設備 (3)料理 (4)サービス (5)クルーズの体験

(1)船

 この分野には全体の25%が配点される。

ハード・ウェア/メンテナンス/安全性

 この点数は以下の点を反映している。ハードウェアとしての船の一般的なプロフィールと状態、船齢とメンテナンス、船体の状況、外部の 塗装、床材と水漏れ防止、プールとその周辺、デッキの調度品、テンダー・ボート、救命ボート、救命いかだ。また内部の清潔さ(化粧室、エ レベーター、床の敷物、壁紙、階段、通路、出入り口)、調理室、冷蔵庫、生ごみの処理、保管、焼却、ごみ処理施設も点数に反映される。

屋外の設備/広さ

 この点数は以下の点を反映している。オープン・デッキの乗客と広さとの比率、混み具合、プール・ジャグジーとその周辺、リド・デッ キ、デッキの長椅子の数と種類(クッションがついているか否か)、デッキの他の調度品、屋外のスポーツ設備、シャワー室、更衣室、タオ ル、(音楽のない)静かな場所。

屋内の設備/広さ/人の流れ

 この点数は以下の点を反映している。立ち入り禁止の通路を含む屋内のパブリック・スペース、乗客の流れと混雑の程度、天井の高さ、ロ ビー、階段、全ての乗客用通路、エレベーター、公室と設備、標識、明るさ、エアコンと換気装置、快適さと混雑の程度。

装飾/調度品/美術品

 この点数は以下の点を反映している。インテリアの装飾と配色、ハードとソフトの造作、木製のパネル(本物か、イミテーションか、化粧 板か)、絨毯(ふさの密度、色、実用性)、ふさわしさと仕上げ(縫い目と縁取り)、椅子(快適さ、高さ、支柱)、天井と装飾の処置、反射 面、美術品(絵画、彫刻、アトリウムの中央装飾)、明るさ。

スパ/フィットネス設備

 この点数は以下の点を反映している。すべての健康スパ、健康センター、フィットネス設備、位置と入り易さ、明るさと床材、フィットネ スと筋力トレーニング・マシーンとその他の器具、フィットネス・プログラム、スポーツと遊戯設備、屋内プール、ジャグジー、グランド・バ ス、アクア・スパ、サウナ、スチーム・ルーム、垢すり、マッサージ、その他の治療室、気分転換用設備、ジョギング、ウォーキング・トラッ ク、プロムナード。

(2)宿泊設備

 この分野には全体の15%が配点される。

スイートとデラックス・グレード

 この点数はスイートとデラックス・グレード・キャビンのすべてのグレード、プライベート・バルコニー(床から天井までの間仕切り、部 分的な間仕切り、バルコニーの明るさ、バルコニーの調度品)のデザインとレイアウトを反映している。また、ベッド・寝台、家具(その配 置、実用性)、その他の備品、クローゼットと洋服を吊るすスペース、引出しのスペース、ベッドサイド・テーブル、鏡台、浴室の設備、洗面 台、洗面用具入れ、明かり、エアコン、換気、オーディオビジュアル設備、贅沢さの質と程度、美術品、隔壁、騒音、振動のレベルも然りだ。 スイートは寝室と居間とが完全に分離していてはいけないものではない。ご注意、最近の大きな船の中にはデッキの全てが上級の客室に当てら れていて、この種の客室とスタンダード・キャビンとの差が大きくなってきている。

 この点数はまた案内書(サービス一覧)のような細かなものも反映する。紙と絵葉書(個人専用の文房具を含む)電話帳、洗濯物リスト、 お茶やコーヒーを入れる器具、花(もしあれば)、果物(もしあれば)、浴室の個人用のアメニティ・キット、バスローブ、スリッパ、そのサ イズ、厚さ、品質、タオルの材質。

スタンダード・サイズ

 この点数は以下の点を反映している。デザインとレイアウト(アウトサイドかインサイドか)、ベッド・寝台、家具(その配置と実用 性)、その他の備品だ。また以下の点も反映している。クローゼットと洋服を吊るすスペース、引出しのスペース、ベッドサイド・テーブル、 鏡台、浴室の設備、洗面台、キャビネット、洗面用具入れ、明かり、エアコン、換気、オーディオビジュアル設備、備品の質と程度、美術品、 隔壁、騒音、振動のレベル。

 この点数はまた案内書(サービス一覧)のような細かなものも反映する。紙と絵葉書(文房具を含む)、電話帳、洗濯物リスト、お茶や コーヒーを入れる器具、花(もしあれば)、果物(もしあれば)、浴室の個人用のアメニティ・キット、バスローブ、スリッパ、そのサイズ、 厚さ、品質、タオルの材質。

(3)料理

 この分野には全体の15%が配点されるが、料理はしばしば今日のクルーズの目玉であり、とても重要なものだ。クルーズ・ラインは、い かに料理が良いかを、乗客に最大限の力説をしているが、それはしばしば約束通りのサービスをするのが不可能と言ってもよい程のものとなっ ている。概して料理の水準は良いものだ。大雑把な言い方をすれば、「もし貴方が良いレストランで食事をするとしたら、何を期待するだろう か。その船は貴方の期待に応えるものだろうか。食事のためもう一度乗船したいと思うだろうか。」ということになる。

 多分、乗客の数だけ違った味の好みがある。「スタンダード」の市場を対象にしたクルーズ・ラインは味覚の範囲が広いものであるのに対 し、より高級なクルーズ・ラインは、より良い品質の料理を提供し、貴方好みに調理してくれることができるだろう。

ダイニング・ルーム/料理

 この点数は以下の点を反映している。ダイニング・ルームの構造、窓の手入れ、座席の設備(小部屋と個人用の椅子、肘掛があるか否 か)、明るさと雰囲気、テーブルの一式、リネン製品の質と状態、陶器とスプーンやフォークなどの食事用器具、テーブルの中央装飾物 (花)。また、メニュー、料理の質、プレゼンテーション、料理のとり合せ、料理の創造性、バラエティーさ、デザインのコンセプト、魅力、 味、質感、口に合うこと、新鮮さ、彩り、バランス、付け合わせ、盛り付け、食前酒、スープ、パスタ、テーブル・サイド・クッキング、新鮮 な果物とケーキ、ワイン・リスト(権威あるワイン・リスト)、価格の範囲、ワインのサービス。

インフォーマル・ダイニング/ビュッフェ

 この点数は以下の点を反映している。ハード・ウェア(ホットあるいはコールド・ディスプレー・ユニット、くしゃみ除け、鋏、アイス・ コンテナと柄杓、給仕用器具)、ビュッフェの飾り付け(全く失望させられたりお仕着せになったりしていないか)、プレゼンテーション、お 盆と一式、正しい料理の温度、料理の分類、朝食、昼食、デッキ・ビュッフェ、ミッドナイト・ビュッフェ、夜食、氷像彫刻のような飾り付 け、スタッフの態度、サービス、コミュニケーション技術。

食材の質

 この点数は以下の点を反映している。使われている食材の質、調和と一人前の量、肉、魚、鶏肉の等級、クルーズ・ラインが一日当たり乗 客一人当たり食材に支出した価格。食材の質は味同様、見た目や品質を大きく左右する。またお茶やコーヒーの質も含まれる(より良い品質の 船は、より良い品質のお茶とコーヒーを提供することが求められるものだ。)。

お茶/コーヒー/バー・スナック

 この点数は以下の点を反映している。提供されるお茶とコーヒーの品質とバラエティーさ(アフタヌーン・ティー、コーヒーとそのプレゼ ンテーションを含む)、マグかカップか、そして受け皿は提供されるか、牛乳は正しいオープン・コンテナか密閉されたパックで給仕されてい るか、セルフ・サービスか丁重に給仕されるか。ケーキやホットケーキ、パイのようなものの品質、バーラウンジのスナック菓子、ホットか コールドのカナッペ、オードブルもまた、この項目を形成する。

(4)サービス

 この分野には全体の20%が配点される。

ダイニング・ルーム

 この点数はレストラン・スタッフのプロ根性を反映している。すなわち、メートル・ドテール、ダイニング・ルーム・マネージャー、給仕 長、ウェイターとバスボーイ、そしてソムリエとワイン・ウェイターだ。セッティングや正しいサービス(正しい側からの給仕)、コミュニ ケーション技術、態度、垢抜けていること、服装のセンス(制服)、そして手際の良さも含まれる。ウェイターは乗客が右利きか左利きか、 テーブルの場所に気が付くべきであり、スプーンやフォークなどの食事用器具とグラスが正しい場所に置かれているか確かめるべきだ。刃物類 とワイングラスもまた然りだ。

バー

 この点数は以下の点を反映している。明るさと雰囲気、バーとラウンジのサービス全体、騒音のレベル、(バーテンダー、バーのスタッ フ、乗客との)コミュニケーション技術、スタッフの態度、人となり、垢抜けていること、手際の良さ、グラスの正しい使用(正しい大きさの グラスであることも)、(船内で料金が生じ)請求書を発行するときの請求書作成とその態度。

船室

 この点数は以下の点を反映している。清掃係とハウスキーピング・スタッフ、(ペントハウスとスイートの乗客の為の)執事、キャビン・ スチュワード、スチュワーデスとその監督スタッフ、細かなところと清潔さへの心配り、ルーム・サービス、リネン製品やバスローブの交換、 言葉(語学)とコミュニケーション技術。

オープンデッキ

 この点数は以下の点を反映している。オープンデッキでのスチュワード、スチュワーデスの飲み物と食事のサービス、デッキの長椅子のタ オルの配置と取替え、セルフサービスのタオル、使用済みのタオルを入れる容器を空にしていること、デッキの全ての備品が整頓されているこ と、標準ではない時間(例えば夜や早朝)のサービスの有用性。

(5)クルーズの体験

 この分野には全体の25%が配点される。

エンターテインメント

 この点数はエンターテインメントのプログラムと、特定の乗客を想定している内容の全体を反映している。クルーズ船のエンターテインメ ントは幅広い年齢層と様々なタイプの乗客にアピールするものでなければならない。ステージ、技術支援、照明、スポットライトの操作やセッ ト・背景のデザイン、音響・照明のシステム(レーザー・ショーも含む)、録音された音帯と全ての特殊効果、スケールの大きなプロダクショ ン・ショーの豊富さと質(ストーリ、筋、内容、繋がり、衣装の創造性、適切さ、品質、振り付け、ボーカルの内容も含む)、演奏、バラエ ティー・ショー、歌手、ビジュアル・アクト、バンドとソロの音楽家。

催物

 この点数は日中の催物・イベントの豊富さ、質、量を反映している。格付けはクルーズ・ディレクターとクルーズ・スタッフ(彼らの注目 度、有用性、能力、プロ根性も含む)、スポーツ・プログラム、乗客参加のゲーム、特別な関心のあるプログラム、港や買い物の講義、心豊か にする講義をも含むものだ。

 また積み込まれたあらゆるウォーター・スポーツ用具(バナナ・ボート、ジェット・スキー、スキューバ用のタンク、シュノーケル用の器 具、ウォータースキー・ボート、ウインドサーフ用のボードを含む)、インストラクション・プログラム、スタッフの監督、(通常は船尾にあ るか)側面にある伸縮自在のウォーター・スポーツ用のプラットホーム、(もし当てはまるのならば)立ち入り禁止の遊泳区域も点数に反映さ れる。

映画/テレビ番組

 この点数は以下の点を反映している。船の劇場で上映される映画、これにはスクリーン、映像、音質が含まれる。船室内のテレビで上映さ れるビデオ、船独自のテレビ局のプログラムを含む他の放映プログラム、内容、エンターテインメントの価値。船室内のテレビ音声チャンネル もこの項目に含まれる。

もてなしの水準

 この点数は、クルーのもてなしの水準と細かなことへの心配り、そして個人的な満足感が反映される。それは上級のオフィサー、中間管理 職、支配人、クルーズ・スタッフ、一般のクルーの、社交性、体裁、ドレス・コードあるいは制服、雰囲気、モチベーション、コミュニケー ションの技術(とても重要)であり、一般的な雰囲気と心配りを含むものだ。

約束されたサービス全体の実現

 この点数は、休日の体験としてのクルーズ全体の質―すなわち乗船して受けたサービスに対して期待した、パンフレットに書かれ、そして (実際にあるいは言外に)約束していたことの実現が反映される。

格付けの結果―著者の覚書

 クルーズ客船の評価と格付けは当然ながら、困難かつ、より複雑なものとなってきている。船が可能な限りの最新のハイテク設備を備えた 最も新しいものだったとしても、乗客は、船の料理とサービスにしばしば失望させられたと繰り返し言い続けているのだ。

 クルーズ・ラインは、乗客は喜んで安い料金に見合った料理を受け入れると言って、自己弁護する。この態度は次のような結果を招くだけ だ。つまり、料理の質、新鮮さ、豊富さ、創造性、プレゼンテーションの急速な低下。サービス、職員の質、クルーの訓練、安全性、メンテナ ンス、他の関連事項の急速な低下もまた然りだ。

 (料理の質、クルーの賃金、その他の細かい事項の)削減は、しばしばクルーズ・ラインによって、乗客が気が付かないだろうとの希望を もって行われる。しかし最終的には、評価を下げた偉大なる得点表において、点数を上げることは殆どないのだ。

 格付けは、クルーズ・ラインが自社のサービスに注意を払い、自社の収益を産み出す乗客の声に耳を傾け、適正な料金ならばこの「金を出 す価値のある」良い休日の長期的な成長に貢献する筈であるのに、クルーズの休日の体験において現在は欠けている、幾つかの事項と手際を元 に戻すことを意図している。

(Douglas Ward, Berlitz Complete Guide to Cruising & Cruise Ships 2001,126-131 (2000))

Information

 よく「ファイブ・スターの名船」とか、「スリー・スターの船では…」といった言葉を耳にすることがあっても、その具体的
な内容については、ご存知ではない方が多いかもしれません。

 これはベルリッツ社から毎年出版されているガイドブックに掲載される英国人客船評論家のダグラス・ワードさんのクルーズ客船の評価で あることが多いです。ここでは、クルーズ客船の評価の基準について述べている個所を、2001年版のガイドブックから引用して紹介しまし た。2001年版であり、古くなっていますが、基本的な考え方は変わっていません。このガイドブックは、2002年発行の2003年版か ら「Ocean Cruising & Cruise Ships」に改題されていますが、今日でも、この分野では権威あるガイドブックの1つとされています。日本の国土交通省が発表しているクルーズ統計でも、このガイドブッ クが恭しく引用されていることがあり、苦笑したこともあります。

 もっとも本書は、あくまでも一英国人が書いたガイドブックに過ぎません。したがって評価は絶対的なものではないです。が、1人の人間 が世界中のクルーズ船に乗船して、一定の客観的な基準に照らしてクルーズ船を格付けたものなので、クルーズ船を選択する際には、参考にな るはずです。なお本書に関し、老婆心ながら、私の方から一言、二言。

 まず、本書の英語はお世辞にも読み易いとは言えません。個別のクルーズ船についての記述は、誉めているような、貶しているような、 やっぱり誉めているような、微妙な書き方をしていて、その英国的な遠回しの皮肉に、思わずニヤリとしてしまうようなものです。本書の魅力 は、実はこうしたところにあります。星の数のような、数字だけを見て終わりにするのは、もったいないです。じっくり時間をかけて読むべき 本です。

 もう1つ。客船に興味を持つと、自分もダグラス・ワードさんのように客船を評価したくなるものです。乗船記を並べたウェブサイトでも 作って、乗船した船に点数を付けてみようか、とも思い始めるかもしれません。それはそれで、燃えている時期は楽しいものですが、そのうち悟 りを開く時がきっと来ます(笑)。点数を付けるために乗船するのではなくて、むしろ旅行自体を楽しもうと考えるようになるはずです。